どうすればいいんだろう…?

どうしたのだろう…?

今、団員達の心は 一つにまとまっていた。



【睡眠不足ですか?】



黒の騎士団のアジトであるトレーラー。

リーダーである彼が言うには、ブリタニアの貴族からいただいたと言っていたが真偽は不明だ。
そんな事は置いておいて、今は目の前の状況が問題だ。


アジトの一室で騎士団の幹部達が集まり、今度の作戦に関して会議をしていた。

相手の戦力などを考えた上で、人員の配置などを決めていく。
しかし、先ほどから話し合いの中心であるはずのゼロは一言も話さない。

片手に書類を持ったまま、動かない。

相当考え込んでいるのか、それともなにか別の…。
もしも前者であったならば、今回の作戦はかなり危険な物なのだろうか。


「……」


軍事担当の藤堂も、零番隊隊長のカレンも、副司令の扇もそれ以外の者も
じっと彼を見て自分なりに考え込む。

もしも危険な作戦なら、また後日話し合って慎重に挑んだ方がいいかもしれない。


そんな時、気の短いのと無駄に声が大きいこととカルシウム不足でその名を知られる
玉城が突然立ち上がり声を上げた。


「だぁーっ! 何とか言えよッ、ゼロ!」


周りにいた者が思わず耳を塞ぐ程大きい声で怒鳴った。


「ちょっと! ゼロだって考えてるのかもしれないじゃない、騒がないでよ!!」


親衛隊長でありゼロへの想いなら騎士団の誰にも負けなさそうなカレンが怒鳴り返す。
玉城に負けず劣らず、声が大きい。
さっき片耳を塞いだ者は思わず両耳を塞ぐ。

その時、ゼロの首がこてん、と前に傾く。
まるでうなずくかのようなタイミングと動作。

しかし、軽く前に垂れた頭が先ほどのように立つことは無い。
一体、どうしたのだろうか…。


その場にいた者が更に不安になっていた、まさにその時。


ピザの箱を片手に部屋に入ってきた黄緑色の髪の少女。
騎士団では実質ゼロの次に、否ある意味ではゼロ以上のちからを持つと言われるC.C.。


「…どうしたんだ? 薄気味悪い程黙り込んで」


チーズの溶けた熱々のピザをほおばりながら彼女はさして興味なさそうに尋ねる。

そして、ふと皆の視線の先に目を向けてからそれを見て、
呆れたような表情を浮かべるとつかつかとゼロに歩み寄っていった。

彼女はゼロの肩を揺すった。


「おい、起きろ。今は会議中だろう、何居眠りなんかしている」


彼女の、良く通る声で放たれた単語。
それは仮面をつけているからこそ今まで分からなかった、今のゼロの状態。


居眠り。


居眠り!?


再び 団員達の心が一つになった。


「…ん……。し、つ…?」


まだ寝ぼけているのか、少しぼぉっとした声。
機会を通している分、よく響いてやけに色っぽく聞こえる。

ゼロ狂のディートハルトなんかは鼻を抑えていているが、その指の隙間には鼻血が伝う。
そんな周りの状況など一切無視して、C.C.は寝起きらしいゼロに対して言った。


「珍しいな、こんな会議中に居眠りするなんて。睡眠時間が足りてないのか?
いつも寝てるようなものじゃないのか?」


いつも!?
いつも寝てるって、ゼロ 貴方は表でどんな暮らしをしているんだ!

一体今日は何回心がシンクロするのか、3度目のシンクロ。


そしてゼロは相変わらず寝ぼけているのか、まだぼぉっとした声で欠伸を零しながら答える。
「…仕方がないだろう、昨日やけに補習が長引いて…ふぁ…ほとんど寝てないんだ」


補習!!? 補習って!!?


本当に何回シンクロするのか、本日4回目のシンクロ。

そしてこのゼロの発言が1番ダメージが大きい。

補習というと出席日数が足りないとか成績があまりに酷い等の理由で
学生が受ける、特別授業のようなもののはずだ。

しかもそれが深夜まで続いたとすればかなりの…。
それ以前にゼロは学生なのだろうか。
だとしたらいつも寝ているというのは授業中も居眠りをしているという事か?

カレンは授業中はいつも上手な居眠りをしているいけ好かない副会長の存在と、
彼が昨日、先生に補習を言い渡されていたことを思い出したが、
大好きなゼロと大嫌いな男を重ねるのが嫌で副会長の存在を頭から追い出した。


ゼロの発言に対し、C.C.は更に呆れたような表情になる。


「まったく…。今の本業はあっちなんだからこんなテロ活動よりもあちらを優先すればいいものを…。
やれば出来るくせに、素直に補習なんて受けてないで適当に小難しいレポートでも出せば良かっただろう」
「あいつが1人で受けたくないって泣きついてきたんだから仕方がないだ…ろ…」


どうやら彼はようやく自身の失言に気付いたらしい。
C.C.はわざとらしく大きなため息をついてまた一切れ、ピザをほおばった。


作戦は無事成功したものの、あの日あの場にいた者の間では暫く、
ゼロの居眠りと補習と、泣きついてきたという“あいつ”の事で話題が持ちきりとなったり

元・教師の扇がゼロに忠告したり玉城がからかい過ぎて数週間、C.C.のピザ代を支払うように
命じられたりしていた。


そして、C.C.の「こんなテロ活動」という発言は見事にスルーされたのであった。


 ↓おまけ↓

「お前も…寝ぼけていたからといって言い過ぎだったんじゃないのか?」
「っうるさい!」



[end]





[2015.09.28 加筆修正]

あまりの誤字の多さに愕然としました。
これ書いたときには漢検3級くらい持ってたはずなんですが、
補習という単語を全て補修と書いていて、おいおいと。
当時のあとがきには「玉城は学生時代補習の達人だっただろう」と書いていましたが、
むしろ彼は補習なんか出なかったんじゃないでしょうかね?