『諦めるな、必ず助ける!』 ねえ、ゼロ。……いえ、ルルーシュ。 私も、あなたの存在理由になれたのだと、思い上がってもいいかしら。 あの言葉があれば、今どんなに苛烈な状況に追い込まれても あなたを信じて耐えることができるわ。 ねえ。 きっとあなたは決めたのね。 ナナリーちゃんが総督に着任して、全てに絶望し、再び立ち上がったあの時に。 彼女だけじゃなく、全てを守るって。 そして守るために、今あなたはそこに立っているのでしょう? 一年前とは違う。あの時より、ずっと強く凛々しくなったあなた。 けど、それと同時に脆く儚いあなた。 ねえ。 私は、あなたの存在理由になれましたか。 私は、あなたを護れますか。 私は、―――あなたを、愛せますか? (すべてが欲しいとは言わないわ。けどせめて、あなたの傍にいることを許して。) ************* 『ルルーシュじゃないか』 ルルーシュ。 その名前が心に甘く棘のように突き刺さった。 まるで忘れかけた記憶を突くかのように、 忘れないように救ってくれるかのように、 その同僚の声で紡がれた名が少女の心の奥深くをついた。 ルルーシュ。 聞き覚えのある名前。 優しい記憶と共にある響き。 かちかちかち、と携帯のボタンを押してカーソルを下げる。 古い写真のファイルを開くと、画面に映されたのは 薔薇を手に微笑む、白い華やかな服を着た美しい少年。 きっと、彼の隣に並べばどの皇女も霞んで見えるだろう。 女神も、天使も、彼と並べば霞んでみるだろう。 優しく微笑むアメシストの瞳と、艶やかな黒髪。 華やかな出で立ちもイヤミに見えないのは、彼がきれいだからだけじゃない。 その芯が、ほんとうに優しいからだ。 遠いあの日。 今はもう二度と戻らない日々だけど。 誰よりも彼を慕っていた幼い自分。 『あなたの騎士になりたい』と言って、彼を困らせたことも憶えてる。 いつか誘ってくれた花畑への散歩。 シロツメクサを器用に編んで作った花輪を、自分の髪に載せてくれた。 彼を護りたい。 ずっと傍にいたい。 ただそれだけを望んでいた。 けれど、それすらも。 ――叶ワナカッタ。 誰よりも愛し、護りたいと望んだ彼は、人身御供として日本に送りこまれ、 ……その地で、命を落とした。 けれど、スザクの言う事が本当なら。 彼は今、アッシュフォード学園に通っていて、生きている。 ――会いたい。 会えばきっと、動き出す。会えればきっと、取り戻せる。 全てが、全てを。 そして、会えたならその時こそ、果たそう。 ――騎士として永遠の忠誠と共に、彼を護る事を。 (あの日から私の心は空虚なままでした。あなたを喪くした、あの日から。) (けれどきっと、今からなら動き出せる。) [end] |