――あの日見た空は、こんなに広くなかった。



そしてカナシイ空に誓おう




何が足りないのかな。

星の瞬く夜空を見上げながらふと考えた。

鍛錬の際の汗がじっとりと肌にまとわりつく。
タオルで拭けばいいが、それはあとにまわしてもいい気がして、今はただ考えた。


なぜ、この空をこんなにも広く感じるのか。
こんなにも寂しく思えるのか。


少しだけ紫を落としたような夜のとばりにはきらきらと輝く星たちがちりばめられていて、
淡い月の光が周囲を照らしている。

――どこにも寂しさを思わせる要素なんてないはずなのに。


「……ルルーシュ…」


気付けばその愛しい名を呟いていた。


かつての親友。かつての恋人。誰よりも愛していたはずの人、そして
誰よりも憎いはずの人。


ゼロとして立ち上がり、その漆黒の罪を身に纏いたくさんの命を奪った罪人。
――愚かなゼロ。間違ったやり方で結果を求め、そして一度、敗れた。

ゼロとして多くの悲しみと罪を背負い、ただ独り、己の願いを叶えんが為に身を削った
悲しく優しいヒト。
――愚かなゼロ。そんなことしなくても、俺は君のために世界を変えたのに。

ルルーシュとして多くの人を愛し、多くの人に愛された誰より優しく脆いヒト。
――馬鹿なルルーシュ。俺は一度として君を憎んだ事はなかったのに。

ルルーシュとしていつも笑顔でスザクを支えてくれた、すべてを受け止め受け入れてくれた
優しく愚かなヒト。
――どうして道を違えてしまったのだろうね、俺たちは。どちらが間違ったのだろう、
どちらが見失ったのだろう。


きっと誰にも分からない。

きっと誰も間違ってない、見失っていない。

――どちらが、変わってしまったのだろう。


愛しき主君を殺した最愛の人を踏みにじり、俺は今ここにいる。


彼のプライドを踏みにじって、略奪って、彼を代償に得た地位で、再び
彼を踏みつけようとしている。たった一度、初めての裏切り。


「…ふ」


思わず、自嘲を零した。


裏切り? 馬鹿らしい。今更だ。

醜く弧を描いた唇をぎゅっと一文字に結び、再び夜空を見つめた。

「何が足りないのだろうな……今の日々に…」


蘇る声は彼の声。
自らが裏切り踏みにじり、自らが棄てた安らぎの時。


『スザク』

そう、彼の呼ぶ声はいつも優しかった。彼の微笑みは暖かかった。


『スザク』

そう、彼の姿はいつも美しかった。優しかった、暖かかった。


「……そうか」


きっと今足りないものは、隣にあるはずだった君の存在なのだろうね。


 ―どちらが変わってしまったのか、なんて聞くのも馬鹿らしい。
  だってきっと、どちらも変わってなんかいないんだから。―


「取り戻すよ…君を、必ず」


あの日、俺が愛してた《ルルーシュ》を 俺が愛してる《ルルーシュ》を
漆黒の咎人《ゼロ》から。



[end]





[2008.06.06 著] [2015.09.29 加筆修正]

ヤンデレ予備軍。
漢字の綴りとか熟語にルビ当てる厨二ちっくなこと、最近やらないなぁ。