何よりも愛しい、君の笑顔を。





――それは、悲劇が起こる前の、優しかった日々の話。


「シャーリー」

不意に、甘い低音が後ろからシャーリーを呼んだ。

少し驚いて振り向いてみると、誰よりも愛しい人が柔らかく微笑みながら自分を見ている。


「ルル? どうかしたの?」


真っ赤に染まる頬を誤魔化そうとするが、それは無理な話というものだ。


「今日、誕生日だろ? それで…何かあげたいと思ったんだが、
…その、好みとかそういうのが分からなくて……プレゼントをあげるのにこういうのも
おかしいかもしれないが、一緒にショッピングモールでも行かないか?」
「えっ……そんな悩んでくれたの? 別にプレゼントなんて気にしなくていいのに、
いらな……」


いらないよ、と言いかけてシャーリーは言葉を止めた。


失礼じゃないか。
せっかくプレゼントをあげたいと言ってくれているのに、それを拒むのは。
相手を拒んでいるようなものじゃないか。


それに………。


「や、やっぱり欲しいな! ルルからのプレゼントっ。
変だとか、そんなことないよっ い、一緒に行こう!」
「すまないな……」


そう言って、ルルーシュは本当に申し訳なさそうな表情で微かに笑った。


「…その…制服のままっていうもも味気ないし、一度寮に戻って着替えてきてもいいかな?」
「え? ああ、かまわない。なら、俺も着替えてこようかな」
「うんっ じゃあ、着替え終わったら校門の前で待ち合わせしよう!」
「わかった。……それじゃ、またあとで」
「うん、またあとで」


そのまま、二人は一旦別れた。


シャーリーはひとまず今日の部活を休む事を顧問のヴィレッタに伝えてから寮に戻り、
ルルーシュは生徒会に出席できない事をリヴァルたちに伝えてから
クラブハウスの自室に帰った。





「おまたせ、ルル」


二人が再び校門の前で会ったのは、あれから20分程経ってからだ。


速い、とは言い難い時間だが、女子がデートの服を選ぶ時間としては
かなり速いものだったとシャーリーは口には出さず自分を褒めた。


めかし込みたい気持ちは勿論強かったが、ルルーシュを待たせるのは嫌だった。

こんなことで機嫌を悪くしたりはしないだろうが、少しでも一緒にいたいのだ。
そのためなら着替えの時間を削ることなんて厭わない。


校門の前で会ったルルーシュは、らしくもなく少しだけ顔を赤くして
視線を泳がせていた。


「? どうかした、ルル?」
「い、いや……」


――普段あまり見ない私服姿に、何か新鮮なものを感じたなんて口には出さない。
そもそもルルーシュはその感情がなんなのかまっったくもって気付いていないのだが。


「行こ?」
「あ、ああ」


ルルーシュの腕を引いて、シャーリーはすたすたと歩き出した。


ころころとよく変わる表情で、シャーリーは実に楽しそうに話していた。


ルルーシュもそれを見て穏やかに微笑み時折相づちを打ったりした。

相づちだけで反応が少し薄い気がしなくもないが、ルルーシュの笑顔が優しかったので
シャーリーはあえて気にしないでおくことにした。

そもそも、ルルーシュにしてはちゃんと話を聞いてくれている方なのだ。
(普段はもっと反応は素っ気ないし、相づちもワンパターンだ。)





きらきらと輝くアクセサリーの並ぶ小さなアクセサリーショップ。

シンプルな十字架や、花をかたどったシルバーネックレス。
中には小さな石のはめ込まれているものもある。


「きれい……。ね、この石、ルルの瞳の色と似てない?」


シャーリーが指さしたのは、薔薇をかたどった小さなシルバーネックレスに
はめられた、小さいがしっかりと輝けるようにカットされた、鮮やかな紫のアメシスト。

「薔薇の形、っていうのもなんかルルっぽいし……ね、これ買っちゃわない?ルルに」
「なんで俺に。今日はシャーリーのを買いに……」
「いいから! ……じゃ、じゃあさ。私がルルにこれ買うから、ルルは私のを
選んで! 二人で……」


おそろいに、と口に出すのは妙に恥ずかしくて言えなかった。


「…その方が、私だけ買ってもらうよりずーっと今日の思い出になるから」
「そ、そうか?」
「そうだよ! プレゼントって何をもらうかじゃなくて、誰に、どういう風に
もらうかっていうのがむしろ大事なんだから。分かってないなぁ、もう」

ぷぅ、とわざと頬を膨らませて言ってみる。


それでも心の底での嬉しさや楽しさは堪えきれなくて、すぐに笑顔になる。


「…じゃあ、私は会計してくるから! ルルもゆっくり選んでて」
「……ああ」


その後ルルーシュに渡されたのはシャーリーの瞳と同じ、
明るい緑色をしたペリドットをはめ込んだ、ひまわりをかたどったシルバーネックレスだった。


『似合うかと思ったから』


そう言って照れくさそうに笑ったルルーシュの顔は、
たぶんずっと忘れられない、永遠の宝物になるだろうとシャーリーは思った。





ねえルル。

私ね、あなたにプレゼントをもらえた事よりも


あなたと一緒に過ごせた時間の方が、ずっとずっと嬉しいプレゼントだったよ。


ありがとう、人生最高の誕生日を。

今度は、ルルの誕生日に 今日買ったネックレスを付けて、二人でどこかへ行こう。


――だって私は、ずっとアナタだけを見つめて、あなただけを愛してるんだから。

(一人になんかさせないし、一人になんかならないよ。ずっとずっと、二人で)


   ―― 一緒に 笑ってよう。 ――


Happy Birthday Dear Shirley! 

                   Thank you,your SMILE.



[end]





[2008.07.08 著]
[2015.09.29 加筆修正]

ひまわりの花言葉は「あなただけを見つめる」。
一途なシャーリーにぴったりですね。

シャーリーはギアスヒロインの中で一番可愛い「女の子」だと思っています。
C.C.やナナリー、ユフィといった他の女性陣も大好きなのですが、
いわゆる正統派な女の子らしい女の子といえばこの子だなーと。
幸せになってほしかった……。